暮らし・文化
「こんにちは」の次に迷わない――ベトナム語の呼び方は、相手と自分を一組で考える
anh・chị・emは年齢差と性別、thầy・côは教師という役割と性別で選ぶ。相手の呼び方だけでなく自分の呼び方まで一組にすると、あいさつの次の一言が見えてきます。
あいさつ語は知っているが、相手と自分の呼び方を選べず会話の最初で止まるベトナム語を学び始めた方
教師役割ではthầy・cô、一般的な年齢関係ではanh・chị・emを、相手枠と自称枠の一組として理解できる
短い初対面の一場面で相手への呼び方と自称の既定ペアを一つ決め、相手の用語を手がかりに調整できる
「こんにちは」を覚えたのに、次の一言で止まる
ベトナム語を学び始めると、まずXin chàoやchàoに出会います。どちらも会話を始める大切なことばです。ただ、学校で先生に会うとき、店で少し年上の人に声をかけるとき、年下の知人にあいさつするときでは、chàoの近くに置かれる呼び方が同じとは限りません。
ここで必要なのは、呼称の長い一覧を暗記することではありません。最初に見る二つの軸は「自分と相手の年齢関係」と「男性か女性か」。相手が先生なら、年齢を推測する前に「教師という役割」と「男性か女性か」を見ます。この順番を知るだけで、最初の判断はかなり整理できます。
呼び方は、その人に貼る名札ではない
ベトナム語のanh、chị、emは、相手だけを指す固定ラベルではありません。同じ人でも、年上の相手と話すときは自分をemと呼び、年下の相手と話すときは自分をanhやchịと呼ぶことがあります。呼び方は「その人が誰か」だけでなく、「今、誰と話しているか」を表します。
もう一つ大切なのは、相手をどう呼ぶかと、自分をどう呼ぶかが関係していることです。ベトナム語では同じ語が呼びかけにも自称にも使われるため、相手側だけを覚えると会話の半分が空きます。絶対に一つの組しかないという意味ではありませんが、初学者はまず典型的な対を知ると、相手の発話を理解しやすくなります。
anh・chị・emは、年齢差と性別をセットで見る
初学者の入口では、相手が自分より年上に見える男性ならanh、年上に見える女性ならchị、自分より年下なら男女どちらにもemと考えます。三語を別々に暗記するのではなく、「年上か年下かを見て、年上なら男性か女性かを見る」という一組の判断にします。
自分が年下側なら、相手をanhまたはchịと呼び、自分をemとするのが典型的です。自称のemは、自分が男性でも女性でも変わりません。反対に年上の男性は自分をanh、年上の女性は自分をchịとし、年下側をemと呼ぶことがあります。あいさつなら、年上男性へEm chào anh ạ.、年上女性へEm chào chị ạ.、年下の相手へChào em.のように言えます。年齢差に固定の数字はなく、同年代や境目では場面や関係によって揺れます。また、この三語は自分と比較的近い世代の相手を考える入口で、親や祖父母ほど世代が離れた相手には別の呼称群を使います。表を絶対規則にせず、相手が実際に使う語も手がかりにします。
先生なら、thầy・côを役割と性別のセットで覚える
学校では、教師という役割が分かっているため、年齢を推測するより判断しやすくなります。男性の先生への呼びかけはthầy、女性の先生への呼びかけはcôです。職業名としてのgiáo viênとは別に、目の前の先生へ呼びかける語として使えます。
生徒側は自分をemとするのが基本です。男性の先生ならEm chào thầy ạ.、女性の先生ならEm chào cô ạ.という形で、相手と自分を一組にできます。先生の側も自分をthầyまたはcôとし、生徒をemと呼ぶことがあります。たとえばThầy chào em.、Cô chào em.です。呼びかけと自称に同じ語を使う点は、anh・chịと共通します。côは学校の外では別の関係を表すこともあるため、ここでは女性の先生への呼びかけに限って覚えます。男性・女性どちらの先生にも対応できるよう、thầyとcôは二つ一組で覚えます。
ạは、相手への丁寧さを文末に添える
ạは文末に置き、年上の相手や先生などへの丁寧さを表す小さなことばです。日本語の一語にそのまま置き換えるより、文全体の終わり方を整える要素として受け取ると分かりやすくなります。
Chào thầy.は形を比べるための例で、生徒が実際に単独で使うと素っ気なく響くことがあります。Em chào thầy ạ.と比べると、後者では自分がemであることと、文末のạが加わっています。同じようにEm chào cô ạ.とも言えます。実際の会話で毎文に必ず付ける規則ではありませんが、先生や年上の相手への最初のあいさつでは、丁寧な入口になります。
迷ったら、相手のことばから組を直す
呼び方は、一度で正解を当てなければならない試験ではありません。たとえば女性が自分をchịと呼び、あなたをemと呼んだなら、その会話では相手をchị、自分をemとする組が見えてきます。最初の予想と違っても、次の発話から合わせればよいのです。
最初は、相手の役割が分かるかを見ます。先生ならthầy・cô。役割で決まらなければ、年齢差と性別からanh・chị・emを考えます。役割も年齢差も判断できないときは、無理に呼称を決めず、呼称を置かないXin chào.のような短いあいさつから始めます。そして相手が自分とあなたをどう呼ぶかを聞き、必要なら調整します。呼び方を人の名札ではなく、二人の間で作る組として考えると、あいさつの次へ進みやすくなります。
発音を聴く
Em chào anh ạ.
Em chào chị ạ.
Chào em.
Em chào thầy ạ.
Em chào cô ạ.
Thầy chào em.
Cô chào em.
Chào thầy.
Xin chào.
覚えておきたいこと
教師ならthầy・cô、一般的な年齢関係ならanh・chị・emをセットで考え、相手への呼び方と自分の呼び方を典型的な対として捉える。迷ったときは相手の使う語から調整する。
試してみましょう
年上男性、年上女性、年下の人、男性教師、女性教師の五つの場面を想像し、相手への呼び方と自分の呼び方を一組ずつ考えてみましょう。